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リュウト編 第1楽章 闇生まれたる地へ



海岸線に生える背の低い草、その一部を円形に刈り取って造られたバトルフィールド。
そこにはギャラリーなどなく、ただ2人のトレーナーが戦っている。


青いバンダナをした少年「動くなハガネール!」


相手のエテボースはハガネールに"けたぐり"をしようとしていた。
だがハガネールがその動きを止めたことで攻撃は失敗に終わる。
攻撃に失敗したエテボースは素早く後ろに下がりハガネールとの距離をとった。


青いバンダナをした少年「"地震"!」


距離があろうが相手が素早く動こうが関係なく攻撃できる"地震"。
ハガネールは大地を揺らし、地震波を発生させる。

自然災害の地震とは異なるために地震波のスピードはそう速いものではなく、地震波よりも衝撃波に近いものであるために波が伝わってくる様子も目で捉える事ができる。
それでもバトルフィールド程度の範囲であれば十分に脅威となりうる速さには間違いない。
だが瞬発力のあるポケモンならばタイミングにもよるが中空に逃げることでそれをかわすことができる。
エテボースは持ち前の身軽さを生かしてすぐに大きくジャンプする。


青いバンダナをした少年「目の前に"岩雪崩"を起こすんだ!」


尾が地面に叩け付けられたことで地面が砕かれ、それによって出来た土の塊が空中に吹き飛ばされる。

しかしエテボースは"岩雪崩"の中を器用に尾の2本の手を使って土塊をつたって行くことで直撃を回避している。
それだけではなく土塊を足場にし、勢いを付けてハガネールに向かって突っ込む。
スピードを乗せた"爆裂パンチ"での反撃を狙うエテボース。
・・・・・・だがそれがバンダナの少年の狙いだった。


青いバンダナをした少年「急げ、"ジャイロボール"!」


ハガネールは頭の先から尾の先までを一本の軸と見立て、身体を高速回転させる。
高速で回転するコマが、地面に落ちている石よりも投げられた石の方をより遠くに弾き飛ばすのと同じ様に、素早く移動してくるエテボースに対して大きなダメージを与える。

さらにハガネールの方はその重量の為に激突時に攻撃時に軸が殆どブレない。
そのため、より効果的にダメージを与えることができたのだ。

"ジャイロボール"の強烈なダメージによってエテボースは戦闘不能に。
膝をつき、悔しがる様子を見せる相手トレーナー。
そして周りの景色は空から地面に向かって崩れていく。
変わって目の前には様々な機械の置かれた部屋が広がっていた。


青年「流石だな、リュウト!
   すぐにハガネールの扱いに慣れるなんて俺には絶対に真似できないよ。」

リュウトと呼ばれた少年「いいや、思ったように指示は出せてないよ。
            ハガネールのパワーに頼ってただけさ。」


彼がリュウト、2年前に"第2次シャドー災害"を終局に導いた少年である。
現在はここ、バトル・道具開発・生態研究などオーレ地方のポケモンに関する研究を一手に引き受けるポケモン総合研究所のスタッフとしてそれなりに忙しい日々を送っている。


リュウト「それじゃあ僕は部屋に戻るよ。
     昼からの研究の準備もしないといけないからね。」


そう言うとリュウトはトレーニングルームを出る。
そのまま自室に戻り研究資料や自分のポケモンを取りに行く・・・・・・つもりだったがその途中、
前から駆け足で近付いて来た研究員に呼び止められた。


研究員「リュウトくん、君に電話がかかってきてるよ。
    国際電話の上にコレクトコール(通話料金受信者払い)だから早く行ってくれよ。」

リュウト「国際電話・・・クリス博士かな?」


ともかくリュウトは電話のある場所へと急いで向かう。
国際電話ということで料金はなかなか馬鹿にならないものがある。

電話の近くにあるテーブルでは昼食を終え談笑をしているスタッフたちが何人かいた。
そこに慌てて走って来た自分に視線が集中するのを感じながらも受話器を取り、保留を解除する。


リュウト「もしもし、どなたでしょうか?」

ミレイ「ミレイよ、リュウト君。」


電話の相手であるミレイもまた、7年前の"第1次シャドー災害"を終局に導いたキーパーソン。
世代こそ違うが、同じシャドーの陰謀を止めた者であることには変わりない。
そしてそのこともあって2人には接点があった。


リュウト「電話で連絡してくるなんて珍しいですね。
     それにしても一体どこからかけてきているんですか?」

ミレイ「インヨのホワイトシティの公衆電話から・・・・・・ってそれよりも!
    先に結論から話すけれど、"ダークポケモンを使うトレーナー"がポケモンリーグに参加していたの!」

リュウト「・・・・・・やはりダークポケモンはまだ残っていましたか。
     でもそれは貴方も予想していたことでは?」

ミレイ「ええ、だからそれだけのことならわざわざ電話してまで伝えたりはしないわ。
    私が伝えたいのは"造る側"の方が残っているかもしれないということなの。」

リュウト「・・・・・・根拠は?」


信じたくない言葉だった。 だからその根拠を求めた。
しかし内心ではその言葉が嘘でないであろうことは分かっていた。

かつてダークポケモンを造っていたシャドーは過去に一度復活したこともあり、何より規模の大きい組織だった。
そのため大勢の残党が残っているであろうし、行方が分かっていない元幹部までもいるのだ。


ミレイ「そのトレーナーは私が近付こうとすると大会を放棄して逃げ去った。
    それは私のことを知っているということだし、普通のトレーナーなら大会で得られる"栄誉"を放棄することに躊躇があるはず。
    なのに彼の逃げ方には迷いが感じられなかったわ。」

リュウト「調べてみる価値はありそうですね・・・・・・その男の特徴は?」

ミレイ「オーレに戻ったら大会での登録に使用していた写真を渡すわ。
    メールが傍受されるとも分からないでしょ?」

リュウト「だから公衆電話から連絡してきたんですね。
     では必ず無事にオーレに戻ってきて下さいよ・・・もしその話が真実であれば貴女はいつ襲われてもおかしくない。」

ミレイ「もう昔の私じゃないから心配しないで・・・・・・それじゃあ。」


電話は切られた。
・・・・・・一体どれだけの通話料金がかかったのだろうかとリュウトは少し不安になる。
しかし今はそんなことを呑気に考えている場合ではない。

シャドーの使っていた研究施設に工場。
まだ活動を続けているならばそれらの施設を再び使用している可能性は高い。
だから現地へ行き、確かねばならない。

リュウトは早速、研究所の最高責任者であるクレイン所長のもとへ向かう。
午後からの研究には参加しないことを伝えるのは勿論、所長くらいにはこのことを話しておくべきだと思ったからだ。

2階の中心に位置する所長室。
そこでは丁度クレイン所長が1人で書類の整理をしていた。


リュウト「所長、先程ミレイさんから"ダークポケモンを造る者が再び現れた可能性がある"との報告を受けたため、
     これよりシャドーの旧研究施設の調査に行って来ます。」

クレイン「・・・・・・そうか、またこんな日が来るかもしれないとは思っていたけれどね。
     リュウト、気を付けて行くんだよ。」

リュウト「ありがとうございます、所長。
     あとこのことですが世間に不安が広がるのを防ぐために確証が得られるまでこのことは口外はすべきではないかと思います。」

クレイン「分かった、この件はしばらくは君に任せよう。」



























リュウトは自分の部屋にポケモンを取りに戻るなど急いで準備を済ませ、
すぐにポケモン総合研究所の西に広がる砂漠にあるシャドーの旧研究施設へと向かった。

外から見た感じでは使われている気配などはない。
そこで中に入っての調査を行うのだが、突然の襲撃などが考えられるためにチャーレムの第六感によって人の気配を探る。


リュウト「どう?」

チャーレム「今の所は一切の気配がありません。」

リュウト「それじゃあ1階は大丈夫そうだ。」


とはいえ油断はならない。
気を付けながら地下の研究施設へ続くエレベーターへと向かう。
だが肝心のエレベーターはその他研究機器含め電気が通っていないために動いていない。

電気が通っていないため施設が使われていないと見て間違いはないだろうが、
リュウトは自身の目でそのことを確認するまでは安心できなかった。

エレベーターが使えないため下の階に行くには足元を壊すしかないのだが・・・・・・。


リュウト「流石に足元は壊せないよね?」

チャーレム「壁とは違って踏みこむことが出来ないから無理ですね。」

リュウト「仕方がないな、"大爆発"だグラーベ!」


ボールから飛び出るはネンドール。
飛び出すとすぐに自身の体表面からエネルギーを一気に発散させる"大爆発"を使う。
その巨大なエネルギーは床に大穴を空けた。
リュウトはネンドールをボールに戻し、チャーレムとともに階下へ飛び降りた。


リュウト「人がいれば今の爆音に気付くはず・・・・・・。
     モート、どうだ?」

モート(チャーレム)「先程と同じです。
      近付いてくる者どころか、人がいる気配すらありません。」


第1次に引き続いて第2次シャドー災害でもシャドーはこの研究施設を使っていた。
そのため今回もシャドーが動いているというのならこの場所を使っているだろうとリュウトは考えていたのだが・・・・・・。

流石に3度も同じ場所を使うほど向こうも馬鹿ではないのか、それともシャドーとはまた別の者だということなのか。
そして期待になるが・・・"可能性"で終わったということなのか。

正直な所、これ以上の調査を続けることが無駄に思えていた。

それでも調査を続けようというのは根拠のない漠然とした不安から。
人の気配すらないからだろうか、胸騒ぎがするなどということはなかった。


リュウト「アテが外れたかな・・・・・・。
     モート、"フラッシュ"で辺りを照らしてくれ。」


チャーレムが発する念波が辺りをかすかに照らす。
薄暗いながらも周囲の様子がぼんやりと見えるようになってきた。


リュウト「・・・・・・!!」


周りの様子が分かるようになったことでリュウトは知った。
確かにこの施設は使われてはいない。

使われているものは"研究設備"のみ。
機器が持ち去られた形跡を見てリュウトはその衝撃に言葉を失った。
ここの研究設備を必要とするということはシャドーと同じ、もしくは近しい研究を行っているということ。
"ダークポケモンを造る者がいる"との情報が確信に近付いてきたという訳だ。

そしてここにあった設備は研究を行うためだけのもの。
勿論、ただ研究をするためだけにここの設備を持ち出すような物好きはいないだろう。
研究の成果としてのダークポケモンを必ずや造るはずであり、その為にはそれを造るための設備が必要となる。


リュウト「(これは恐らく工場の方も・・・・・・!!)」


砂漠をさらに北東に進めば、かつてシャドーがダークポケモンを生み出すために使っていた工場がある。
リュウトは研究所での調査を切り上げてすぐにそちらへと向かった。

陽が落ち切った頃にシャドーの工場跡に到着。
建物に入ってすぐの部屋ではリュウトが予想した通りの光景が広がっていた。


リュウト「やはり多くの機械が持ち去られている・・・・・・。
     モート、気配はあるか?」

モート(チャーレム)「いえ、研究所の時と同じく感じられません。」

リュウト「確実に何かしらの活動をしているはずだけど、一体どこで・・・・・・?」





Partner's Date
リュウト
Pokemon
チャーレム(NN:モート)
ネンドール(NN:グラーベ)



>>To be continued!!

<次回予告>
それまで全く気付かれることなく活動していた"造る者"。
だが彼らは突如、白日のもとに姿を現す。
裏で活躍するミレイ、怪しむリュウト、果たして・・・・・・。
※なお、この次回予告には多少の嘘が含まれています

<あとがき>
原作にはない未開の地(?)インヨ地方なるものが出てきました。
これはかつて自分が制作していたポケモンのゲームで使おうとしていた地域なんですよ。
地理的には中国地方→山陰+山陽地方→陰陽地方となっており、ジョウト地方の西側にあたり、
ホワイトシティの方は初代からやってる方にはお馴染みの場所だろうと思います。

どうでもいいけれど最近は何故コロシアムはダブルメインなのかが分かって来た気がします。